Product Story Vol.09
muraco × CWF Talk Session
素材選択の中でのアップサイクル
1976年からアウトドア用のバッグや官公庁向けの災害対策用品を手がけてきた、福島県いわき市を拠点とするキャニオンワークスがプロデュースするブランド「CWF」。
今回のコラボレーションでは、素材の一部にmuracoのプロダクトの残反を用いることで、ブランドとして初めてアップサイクルへの取り組みとなった。
CWFクリエイティブディレクターのアクタガワ タカトシ氏と、muraco代表の村上 卓也から開発秘話やこれまでのストーリーを訊いた。
Text : Koichi Kusano
スタイリスト・ライターとしての活動を経て、ファッション/アウトドア/スポーツを軸とした様々なプロダクト開発やメディア・広告などのクリエイティブ製作に関わる。『ふくしまみらいチャレンジプロジェクト』にて半官半民の事業の一環で、被災企業である「キャニオンワークス」よりアウトドアバッグブランド「CWF」を立ち上げる。
インテリアショップや広告代理店でのキャリアを経て、二代目として引き継いだ金属加工会社の新規事業としてアウトドアブランド muracoを立ち上げる。アウトドア業界の既成概念にとらわれない自由な発想と、金属加工業のクラフトマンシップを武器に、自ら製品の企画 、デザイン 、設計を手がけ 、業界に新たな風を送り込む。
– お互いのブランドの印象を教えてください。
アクタガワmuracoはアウトドアメーカーとしては稀有な都会的でデザインコンシャスなブランドだなというイメージがありました。以前からmuracoのテントシェルターを使わせてもらっていて、村上さんにはCWFのオールウェザーコンテナを使ってもらっていて、機能とデザインを両立したいという思いはお互い同じであることを感じていたので、私の方から一緒になにか作りませんか?というオファーをしました。
村上今まで某ブランドのハードコンテナを使用していたのですが、オールウェザーコンテナを初めて使用し、その使用感の良さに驚きました。CWFチームは本物のキャンパーで、実際のキャンプシーンの中で何が必要かをわかっているなという印象でした。
– CWFというブランドが生まれた経緯を教えてください。
アクタガワもともとは東日本大震災に伴う原発事故によって、立ち入り禁止区域に指定された事業者さんを支援する「ふくしまみらいチャレンジプロジェクト」という半官半民の事業の一環で、被災企業であるキャニオンワークスに私がコンサルとして派遣されたのがきっかけです。企業にヒアリングする中で、従来はOEMが主体だった同社の方から自社ブランドを立ち上げてみたいという要望があったため、ではやってみましょうということで私がプロジェクトリーダーとなってCWFを立ち上げました。
-オールウェザーコンテナ、サケバッグの便利なところやおすすめの使い方を教えてください。
アクタガワオールウェザーコンテナは万能な収納用品です。悪天候にも強く、耐久性が高く、少々形状が合わないものを詰め込んでもバッグの方が変形して合わせてくれますし、地面に落としても衝撃を吸収するのでとても使いやすいです。これに慣れるとハードコンテナの扱いは面倒でしかありません。サケバッグはやはり瓶が割れても漏れない安心感に尽きますね。旅先でお酒を買って帰る方には特に重宝されています。バックル式のロールトップなので、木の枝に吊り下げておけば蹴り飛ばす危険も無いですし、自転車で花見に行くなんてシチュエーションでもハンドルに簡単に固定できて便利だと思います。
– アップサイクルのアイディアはどのようにして生まれたのでしょうか?
アクタガワCWFはリサイクル素材を使うような耳触りが良いだけで表面的なサステナブルへの取り組みは無意味だと考えています。まずは壊れない丈夫な製品を作って永久に使い続けてもらうことが一番だと考えていますが、廃棄される運命にある素材をアップサイクルすることにも意味がありますので、従来からCWFでは工場で出た残反を利用した製品を展開しています。今回はmuracoさんの方から残反利用の提案をしていただきましたが、無駄を無くすという意味で非常に良いご提案をいただいたと思っています。こういった柔軟な製造方法が選べるのも日本製ならではのメリットです。
村上muracoとしては他ブランドとのコラボレーションにおいて、ロゴの羅列や、色替えだけの物はしたくないと考えています。アクタガワさんからCWFとのコラボレーションの提案をもらった時も、ただ別注カラーやピスネーム縫い付けで終わりにしたくないと思っていました。一方でブランドが成長していくにつれ、製品生産量の増加とともに、テントの残反など、材料ロスの量が増えていっている事も認識していました。そこでキャニオンワークスさんが国内工場で小回りが効くという点、我々の設備(レーザーカッター)で残反の処理をして素材に仕立てられる点などを加味して今回の取り組みになりました。ただし、今回の取組みは残反の処理をするというのが第一目標ではなく、コラボレーションにおける生産ロットや生産背景などの条件を総合的に判断し、残反を活用するという方向に自然と辿り着きました。無駄な在庫を造らず、低コストを実現しながら本当の意味でのアップサイクルの取組みが実現できたのではないかと思います。
– その他にもこだわったポイントがあれば教えてください。
アクタガワ白いオールウェザーコンテナはCWFとしても初の試みで、やはり汚れが目立ちやすいので、製造工程で汚れがつかないようラインを工夫しました。またサケバッグはmロゴの配置に気を使う必要があったので、muracoさんの方でレーザー裁断してから納品していただきました。これはキャニオンワークスの設備では難しかったので助かりました。
村上オールウェザーコンテナはアップサイクル素材を活用しながらも、muracoらしさを表現する為にジャカードのmロゴが配置されたベルト(写真左)を使い、ギアをいっぱいに詰め込んだ時にもグリップしやすいようホース(写真右)を取り入れました。
– プロダクトをどのようなシーンで使ってもらうことを想定してますか?
アクタガワやはりmuracoのテントを使っている方に、アイテムのトーンを合わせて使っていただくのが良いのかなと考えています。またキャンプシーンに限らず、クルマのラゲッジに積んでおいても様になるアイテムだと思いますし、私も村上さんもクルマ好きですので、同じクルマ好きな方にもオススメしたいです。
村上キャンプの基本セットがしっかりと収まるサイズ感なので、常時車に積んでおいて、思い立った時にそのままキャンプへ出かけられます。僕は2個持っていて、1個にはキャンプギアを、もう1個には洗車道具を入れていますね。
1976 年からアウトドア用のバッグや官公庁向けの災害対策用品を手がけてきた、福島県いわき市を拠点とするキャニオンワークスがプロデュース。同社のイニシャルに加え、Fukushima・Factory・Freeuse の意味を込めた「F」を添えたの がブランドネームの由来です。クリエイティブ・ディレクターとしてアクタガワタカトシ(Thunderbird Design)が参加し、 様々なアイディアを盛り込んだ機能的な製品を開発しています。
CWF オンラインストア : https://cwfgearbags.com
Instagram : https://www.instagram.com/cwfgearbags/