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muraco Product Story Vol.01

小さな偶然と、開発者の実体験が生んだ、
常識にとらわれないペグハンマー

Product Story|2020.04.21 up

muracoの代表的プロダクトであるペグハンマー「CARAJAS PEG HAMMER」。T字型ヘッドが主流のペグハンマーの常識を覆した機能性とデザインは、いかにして生まれたのか。その誕生秘話を、開発者村上が語ります。

Text & Photography: 村上卓也

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“忘れ物”が生んだアイデア

ある日、河川敷でテント設営をしていると、ペグ打ち用ハンマーを忘れていることに気づきました。河川敷は地面が固いため、靴裏で押し込んでも入る気配がありません。そこで近くに落ちていた手頃な大きさの石でペグを打ち込むことに。片手で握れて、打撃面が平たい石を使ってペグ打ちしていたのですが、石を掴んだ手と腕を眺めながら、「この形状でペグハンマー作れるかもしれない」と思い立ちました。

従来のペグハンマーはT字型のヘッドのものが一般的で、片方が打撃面、もう一方がペグ抜きの機能が付加されているものがほとんどです。私自身も某メーカーのハンマーを愛用していましたが、大きく、重く、かさばる。そのため、ツーリングでのキャンプなど荷物が制限されるシーンでは、省かれるツールの一つでした。

小さな体験がヒントに

キャンプの後、自宅に戻り早速スケッチブックに色々な形状のハンマーのイラストを書いていきました。
「ストレートヘッドでかさばらない」「市販品で最も軽く」「ペグ抜き機能も持つ」「コストパフォーマンスも重視」などを、設計の基本的な条件にしました。
ストレートヘッドのデザインは当初、アイスキャンディーのようなデザインを想定していました。比較的大きな円筒形状のヘッドに、打撃面である平面を持たせるスケッチを何パターンか描いていましたが、最も難しかったのは、ペグ抜きの機能をどう持たせるかという部分です。

そこで、ペグ抜きのなかったキャンプでは、ペグをどのように抜いたのか思い返したのですが、ヒントは「トウキック」にありました。キック力が無くても、つま先で真っ直ぐ蹴ると、ボールは強く飛びます。その要領でペグをぐらつかせて緩めていたのでした。この「緩めて抜く」を機能として付加できないかを検討していきました。

開発当初のアイデアスケッチ

形状の試作を、徹底的に繰り返す

当初はペグハンマーを逆さまに持ち、ハンドルであるパイプに、地面から突き出たペグの頭を被せて前後左右に揺さぶる構造を考えました。しかしパイプの内径が細くないと、地面から短く突き出たペグに作用しにくい。

また、ヘッドとの重量バランスが悪いことや、強度が低下すること、さらにはハンドル後端部分に付ける、抜けどめ防止のロープを痛めてしまう可能性もあることから、断念しました。それでも、どこかに穴を開けられないかと熟考していった結果、現在の形状に近い、ヘッド先端に穴明け加工する形状に辿り着きました。

muracoらしさを見つめ、素材を選定

次に素材選定です。まずペグの素材を考え、ペグより硬い素材が良いか、柔らかい素材が良いか検討していきます。一般に、釘打ちを想定したハンマーは、釘よりも硬度のあるクロモリ鋼が多く見受けられます。しかし外で雨や夜露に晒され錆びるリスクを考えると、「使用シーンに適した素材選定」というmuracoの設計理念からは外れてきてしまいます。

では塗装をすればいいかというと、インロー部は寸法精度を出す為に塗装は避けたい。打撃面も打ち込む度に塗装が剥げてしまう。そもそも軽い物を作りたいので、重さの無いペグハンマーでは、現在主流になりつつある鋳鉄のペグは打てないだろうと考えました。

商品を売ることだけ考えれば、あらゆるペグに対応させたいところですが、muracoはある意味アウトドアシーンの主流では無いところが、ファンの方からご支持いただいていると思いますので、「muracoならではのペグハンマーを実現しよう」という考えに到りました。そして素材はサビの発生し難いステンレスを選び、ジュラルミンのペグ専用のペグハンマーとして、軽さを追求する方向に決まりました。

製造事業部からは、切削性・刃持ちがいい「SUS303」というステンレスを採用すべきという声が上がりました。設計側としては切削性は悪いが、「SUS304」の方が、光の反射、光沢感など素材本来の美しさで優れている部分があると主張。それらも踏まえ、まずは「SUS304」でT1サンプルを作る事になります。T1サンプルは色々なシミュレーションを重ねた結果、最終形状と比べても近いデザインです。

「SUS304」を採用したT1サンプル

小さな問題点も、決して妥協しない

しかし修正が必要な箇所が散見されました。打ち易いと思っていた大きめのヘッドですが、打ち込み時に少しでも軸から外れると、インパクト後に、外れた側に逃げてしまい、作業性が悪い。またペグを緩める用途でヘッド先端から開けた穴ですが、太めのペグは良いのですが、muracoのテントに付属させている「ANGULAR NAILS」は、スカスカで緩めにくく、使えるものではありませんでした。当然ながら、muracoのペグラインナップ全てに対応させる必要があります。

また、ペグ抜き時にせっかく緩めてもその後結局、反対の手で、地面からペグを素手で抜き取る必要があるので、その部分も機能として付加させたい。T2サンプルでは、それらのポイントに修正を加えていきます。まず、ヘッドの質量を減らし、打撃面をあえて減らします。ヘッド先端の穴は、テーパー形状にして奥側を細く絞り、細いペグにも対応できるようにしました。先端の穴で緩めた後にそのまま引っかけて抜き取れるような機構を盛り込みます。

修正を加えたT2サンプルのヘッド

するとヘッドが小さくなった分、打撃時にしっかりと狙う感覚が付き、逆に打ち込みやすくなりました。ヘッド先端の穴も細いペグでも効くようになりました。また打撃面から90度ふった方向からミーリング加工した横穴によって得られた段部分で、緩めたペグをそのまま引っかけて抜き取ることができるようになりました。

それでもまだ課題は残りました。いくつか作ったT2サンプルの内、インロー部分の交差マッチングの悪いものが、ペグ打ち後に少し緩んでしまう。使用には問題なさそうですが、muracoが求める精度感を出すために、ヘッドのインロー部分の外径にOリングを組込む事にしました。最終的に表面処理のアルマイト行程を鑑みた交差設計や、ロゴの落とし込み、パッケージ形状の検討などを重ね、製品版が完成しました。また素材は加工性の向上の為にステンレス304から303に変更しました。開発段階では外観の美しさが優れていると判断していましたが、加工速度の微調整などで304の外観に近づける事に成功しました。

リリース後は、予想を超える反響をいただきました。muracoならではの商品として認知いただいたとともに、多くのフィードバックも寄せられました。ロープの長さの変更や、店頭での陳列を想定した、商品ラベルの改善などを行い、現在の形に進化しています。

現在も大規模なデザイン改修を目指して材料メーカーとの打ち合わせを重ねています。できる限り早く、CARAJAS PEG HAMMER 2のリリースをしたいと考えています。

小さな偶然と、開発者の実体験が生んだ、
常識にとらわれないペグハンマー
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